【環境科学】ヨーロッパの洪水パターンは気候変動に関連している
Nature
2019年8月29日
ヨーロッパにおける河川による洪水に明白な地域差が存在していることが、気候変動の地域的パターンと関連しているという見解を示した論文が、今週に掲載される。ヨーロッパで洪水の増えている地域と減っている地域がある理由を大陸規模で分析したのが今回の研究だ。
河川による洪水は、大きな犠牲を伴う自然災害で、それに伴う年間損失額が1040億米ドル(約11兆4400億円)と推定されており、持続的な経済成長と都市化によってますます増えることが予想されている。降水量に地域差が生じることが予想され、洪水パターンに関する大規模な観測データがないため、河川による洪水に対する気候変動の影響を決定することは難しかった。
今回、Gunter Bloschlたちの研究グループは、1960~2010年に3738か所の水文観測所から発表されたヨーロッパの河川流量観測のデータセットを分析し、洪水を引き起こす主たる要因(最大降水量、土壌水分レベル、気温)の変化を評価した。その結果、ヨーロッパには、10年間に洪水が11%以上増加した地域がある一方で、23%減少した地域があることがわかった。北西ヨーロッパで洪水の規模が増大しており、その理由は、極値降水量と土壌水分の増加にあるとBloschlたちは考えている。また、南ヨーロッパでは洪水の傾向が弱まっており、それが冬季降雨量の減少による可能性があることをBloschlたちは明らかにしている。
以上の結果は、洪水管理戦略を設計する際に気候変動の影響を考慮に入れる必要があることを示しているとBloschlたちは結論付けている。
doi:10.1038/s41586-019-1495-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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