【保全】えり漁の影響を評価する
Nature Communications
2019年5月22日
職人作りのえりを使う漁法によって、生態系が被害を受け、従来の乱獲抑制策が有効性を失い、規制を受けない非公式の財産権を前提とした社会的対立が起こるとする事例研究を紹介する論文が、今週掲載される。
熱帯域の海岸線では、職人作りのえりが広範に用いられており、その内側に魚を集め、干潮で水位が下がった時に捕獲する。こうしたえりなどの職人作りの漁具が及ぼす影響は、近代化漁法の場合より小さいと考えられているが、それを詳細に調べる研究はほとんど行われていなかった。
今回、Dan Extonたちは、2002~2016年の15年間にインドネシアのカレドゥパ島で、職人作りのえりが及ぼす生態学的影響と社会経済的影響を調べた事例研究の結果を報告している。この期間中に、えりが盛んに使われるようになり、その数量は約4倍、総延長は約3倍増加した。しかし、それぞれのえりの1日当たり漁獲高は、最盛期から約90%減少し、周辺のサンゴ礁における魚類個体数は、ほぼ半減した。また、今回の研究で、えり漁で捕獲された魚類が500種を超え、幼魚の占める割合がほぼ4倍に増加したことが分かった。さらに、えりによって海草生態系が直接的に被害を受け、サンゴ礁とマングローブも影響を受けたことが明らかになった。一方、地元コミュニティーでの面接調査では、漁域とえりの所有権を巡る社会的対立が増えていることも判明した。
Extonたちは、職人作りの漁具についての緊急の評価と管理法の刷新が必要だと主張している。
doi:10.1038/s41467-019-10051-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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