【神経科学】ショウジョウバエの腸内で合成されたアミノ酸が睡眠調節に果たす役割
Nature Communications
2019年5月8日
ショウジョウバエの腸内で産生されるアミノ酸の一種D-セリンが、睡眠の調節に重要な役割を果たすことを明らかにした論文が、今週掲載される。D-セリンはショウジョウバエと哺乳類で保存されており、今回の発見は今後、睡眠の調節に関する新たな知見につながる可能性がある。
D-セリンは細菌にのみ存在すると考えられていたが、比較的最近の研究で、ヒトの体内に天然のD-セリンが存在することが明らかになった。しかし、D-セリンの生理的機能は解明されておらず、D-セリンがヒトの脳内で何らかの役割を果たしている可能性が一部の研究によって示唆されている。
今回、Yi Raoたちの研究グループは、さまざまな遺伝的変異を保有するショウジョウバエのスクリーニングを行い、著しい睡眠障害を起こしている変異体を発見した。この変異ショウジョウバエ系統の遺伝子を調べたところ、D-セリンの合成と分解に関わる遺伝子が破壊されていることが判明した。D-セリンの合成酵素であるセリンラセミ化酵素(SR)が欠如していると、睡眠時間が短くなった。また、SRは神経系と腸内の両方で発現しているが、睡眠の調節にとって機能的に重要なのは腸内のSRの活性だけであることも分かった。
この他にも、ショウジョウバエの体内でSRが発現する器官があるのか、腸内で産生されるアミノ酸が従来の通説で中枢神経系によって制御されているとされる過程に対して具体的にどのような影響を及ぼすのかを解明するためには、さらなる研究が必要となる。
doi:10.1038/s41467-019-09544-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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