【工学】生体細胞から着想を得たロボット
Nature
2019年3月21日
生細胞の集団移動を模倣するロボットについて紹介する論文が、今週掲載される。この論文では、あらかじめ決められた行動をとる大規模ロボットシステムを開発するための新たな手法が示されている。この新システムは、生体の機能や構造から着想を得た現行のロボットシステムと比べて、スケーラビリティーとロバスト性が優れている可能性がある。
モジュール型ロボットシステムやスワームロボットシステムは、生物学的挙動(例えば、自己集合、治癒、輸送など)を模倣するように設計されてきたが、その大部分は、集中制御を必要とするか、設計が複雑なためにロボットシステムの能力とスケーラビリティーが制約を受けていた。今回、Hod Lipsonたちの研究グループは、最小限必要な設計を行い、こうした制約を低減した。Lipsonたちのロボットは単純な円板形の「粒子」からできている。Lipsonたちによれば、その方が、より複雑なロボットに比べて大量に生産して維持するのが容易だという。個々のロボット粒子は移動することはできず、カメラの絞り装置のように開いたり閉じたりするだけだが、緩やかに集合することができ、光などのシグナル勾配に対してオフセットパターンで振動するようにプログラムされている。これによってロボット粒子は、刺激源に向かって集団移動する。
Lipsonたちは、移動運動、物質の輸送、および光刺激に向かっての移動を、最大25個の物理的ロボット粒子を使って実証し、最大10万個のロボット粒子を使ったシミュレーションで、このロボットシステムのスケーラビリティーを示した。また、このロボットシステムは、重荷を運ぶこともでき、シミュレーションでは、ロボット粒子の20%が故障しても、重荷をつけた移動を維持できると予想された。従来のロボットシステムは1つの部品が使えなくなっただけで故障してしまうことがあったが、今回のロボットは、従来のロボットシステムにはないスケーラブルな制御性とロバスト性を示していると、Lipsonたちは結論付けている。
doi:10.1038/s41586-019-1022-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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