発生頻度が増えて生物多様性を脅かす海洋熱波
Nature Climate Change
2019年3月5日
海洋熱波の発生頻度が増しており、1987~2016年の年間熱波日数が1925~1954年と比べて54%増加したという結果を示す論文が、今週掲載される。海洋熱波の物理的現れはさまざまだが、今回の研究から、全ての場合で重要な生物種と生態系の構造と機能に影響が及んでいることが明らかになった。
海洋熱波は、広範囲にわたる生物の死滅、生物種の生息分布域の変化、および生物群集の再編成を引き起こすことで、生態系全体の構造と機能を変化させることが、さまざまな地域的事例研究から示されてきた。また、海洋熱波は、生態系物品や生態系サービス(例えば、漁業の水揚げ高や生物地球化学的過程など)に影響を及ぼすことで、大きな社会経済的・政治的派生効果を生み出すこともある。
今回Dan Smaleたちは、既存の海洋熱波の枠組みを用いて、全ての海盆における海洋熱波の傾向と特性を定量化し、生物種から生態系までの生物学的な影響を調べた。その結果、太平洋、大西洋、インド洋のそれぞれ複数の海域が海洋熱波の激化に特に脆弱であり、その原因として、高度の生物多様性が存在していること、温度範囲の上限ぎりぎりで生息する生物種が数多く存在すること、または気候以外の人間の影響が同時に存在することが挙げられることが分かった。海洋熱波にはさまざまな特性のものがあるが、その全てが、種々の生物学的過程と生物にとって有害だった。こうした生物には、サンゴ、海草、コンブなどの極めて重要な生物種が含まれている。
Smaleたちは、海洋熱波の発生頻度は気候変動によって今後も上昇し続け、それに伴って海洋生物が影響を受けるために、生態系と生態系サービスに対して広範な影響が及ぶ可能性がある、と結論付けている。
doi:10.1038/s41558-019-0412-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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