【材料】従来と異なる格子を使って3Dプリンター材料の強度を高める
Nature
2019年1月17日
複数の配向を有する格子を使って、これまでより強度を高めた人工軽量材料が3Dプリンターで作製されたことを報告する論文が、今週掲載される。この新しい格子設計は、強靭な金属合金の根底にある原理に基づいている。
3Dプリンターを利用すれば、ノードとノードをつなぐ支柱の反復からなる格子構造を有する設計材料を作製でき、これによって設計材料の軽量化と強靭化を図れる。ところが、これらの材料はひとたび壊れると壊滅的なまでに崩壊してしまうため、その実際的な用途は制限されている。このような崩壊は、設計材料が構造化されている、つまり格子の全体的な配向が同じことが原因である。これと同じ現象は、同様に構造化されていて、特定の面に沿った内部すべりによって変形する金属単結晶で起こる。これに対して、さまざまな配向を有する結晶粒を含む多結晶材料においては、結晶粒間の境界が、発生したすべりと亀裂の伝播を防止する上で役立っている。その結果、多結晶材料の変形への耐性が高くなっている。
今回、Minh-Son Phamたちの研究グループは、多結晶材料を模倣して、粒状構造を有する新しい格子様のメタ材料を設計し、内部格子の配向が領域によって異なるようにした。そして、この粒状のメタ材料(「メタ結晶」と命名)を変形させたところ、従来のメタ材料と比べて、強度がはるかに高く、耐損傷性も高いことが明らかになった。また、多結晶材料と同様に、メタ結晶の強度は、それぞれの粒子様の格子領域を小さくすることで高められる。
さらに、Phamたちは、外部から力をかけるとねじれて異なる配置になる構造を有する特異なメタ結晶を作製して、結晶材料における類似の再配置を模倣した。今回の知見をまとめると、さまざまな用途に適したより強靭で軽量の3Dプリンター材料の開発につながる可能性が明らかになった。
doi:10.1038/s41586-018-0850-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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