【環境】永久凍土の融解によって北極域のインフラがリスクにさらされている
Nature Communications
2018年12月12日
2050年になると、北極域の北半球永久凍土の現人口の約4分の3が、永久凍土の融解に伴うインフラストラクチャーの損害の影響を受ける可能性があることを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究は、たとえパリ協定に定める目標が達成されたとしても、北極域のインフラの大部分がリスクにさらされることを示唆している。
地球温暖化を原因とする地表付近の永久凍土の融解は、重要なインフラに損害を与える恐れがあり、天然資源の利用と北極コミュニティーの持続可能な発展に対する重大な脅威となる可能性がある。北極域の経済的意義と環境的意義が高まっているため、インフラに対する潜在的リスクに関する情報が必要となっている。
今回、Jan Hjortたちの研究グループは、気候変動予測に基づいて北極域の北半球永久凍土領域におけるインフラの危険に関するリスク評価を行い、2050年にリスクにさらされるエンジニアリング構造物を定量化した。その結果、21世紀中頃には、たとえ温室効果ガスの排出量が安定的に推移するようになり、あるいは減少したとしても、北極全体の人口(約400万人)の大部分と交通インフラおよび産業インフラの70%が、永久凍土の融解のリスクの高い地域に含まれることが明らかになった。この結果は、北極全体のインフラの3分の1とロシアの北極圏に立地する炭化水素抽出施設の45%が、永久凍土の融解に関連した地盤の不安定化によって、建造環境が深刻な打撃を受ける可能性のあることを示唆している。
Hjortたちは、今回の結果から、温暖化する世界におけるインフラの詳細なリスク評価が必要であることが実証されたと主張している。
doi:10.1038/s41467-018-07557-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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