【医療】スマートフォンの写真を使った貧血の診断法
Nature Communications
2018年12月5日
貧血を検出するためのスマートフォンアプリを紹介する論文が、今週掲載される。このアプリは、スマホで撮影した爪の基部の写真を解析して、貧血を検出し、血中ヘモグロビン値を推定する。現在のところ、貧血の診断とモニタリングには血液検査が必要だが、このアプリを用いる方法は血液検査に代わって用いられる可能性がある。
世界では、20億人以上が貧血にかかっている。現在、臨床検査で血中ヘモグロビン値を測定するには、専用の機器が必要で、侵襲性、精度、インフラ要件、および費用がトレードオフの関係にあるが、貧血の有病率が最も高い農村環境や少資源環境ではそれら全てが問題になっている。
今回、Wilbur Lamたちの研究グループは、爪の基部の画像から得られる色や技術的メタデータを解析して、血中ヘモグロビン濃度を算定するアルゴリズムを開発した。このアルゴリズムは、スマホアプリに組み込まれるため、スマホだけで機能し、他の機器を必要としない。100人の参加者による臨床評価では、このアプリが、血中ヘモグロビン濃度を、貧血を検出するために現在利用できる診断ツールに匹敵する高い感度と精度で推定できることが明らかになった。さらに、4人の参加者による臨床評価では、このアプリをモニタリングツールとして使用した場合の精度の高さが明らかになった。
Lamたちは、このアプリによって、専用の機器や訓練された人材が不足している地域での貧血のスクリーニング検査が実現し、貧血患者の血中ヘモグロビン濃度を1分以内に遠隔でモニタリングできるようになる可能性があるという考えを示している。ただし、このアプリの診断精度が血液検査による貧血の検査に取って代わるために必要な高いレベルに達しているかを確認するには、参加者を増やしてさらなる研究を行う必要がある。
doi:10.1038/s41467-018-07262-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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