【考古学】中世の村民21人の歯の健康状態を評価する
Nature Communications
2018年11月21日
歯石の解析によって中世デンマークの定住者21人の口腔健康状態が明らかになったことを報告する論文が、今週掲載される。この研究では、タンパク質の特定のプロファイルによって健康な人と口腔疾患にかかりやすい人を区別できることが示唆されている。こうした違いは従来の方法では観察できないことから、著者たちは、過去の人々の口腔の健康状態を解明できる今回の手法の有用性が明示されたと主張している。
歯石にはさまざまな分子が保存されており、ヒト由来の分子の他、細菌や食物などに由来する分子も含まれている。この分子組成は、健康時と疾病時で異なっており、指紋のように一意であると考えられてきた。
今回、Jesper Olsen、Enrico Cappelliniたちの研究グループは、メタプロテオミクスという方法を用いて、デンマークTjaerbyの墓地の考古学的発掘調査で回収された西暦1100~1450年頃のものとされるヒトの遺骸21体の歯石に含まれるヒト由来、細菌由来、および食物由来のタンパク質の同定と定量を行った。著者たちは、この遺骸の試料を現代の健常者7人から採取した試料と比較した。解析の結果、遺骸の試料は2つのグループに分けることができ、一方は主に病原菌によって構成されており、もう一方は現代の健常者の口腔細菌相との類似性が高いことが明らかになった。また、タンパク質プロファイルからは、中世の人々と現代人の歯石の一般的な違いも示され、これは生活様式と衛生状態の変化を反映したものである可能性がある。
著者たちは、今回の知見から、メタプロテオミクスを用いることで、考古学的調査で発掘されたヒト集団の健康状態をより詳細に再構築できる可能性のあることが示唆されたと結論付けている。
doi:10.1038/s41467-018-07148-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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