【医療】米国での薬剤の処方割合に地域差があることが明らかに
Nature Communications
2018年10月10日
米国全土を対象として、広く用いられている薬剤約600剤の処方割合を分析した結果について報告する論文が今週掲載される。この結果から、人種構成、各州の医療関連法規、そして裕福さが処方薬の選択に影響していることが判明し、一部の地域では、低価格の選択肢よりも有効性が高いと証明されていなくても、価格のより高い薬剤が常に選択されていることが明らかになった。
米国は、社会的にも文化的にも均質ではなく、平均余命などの健康指標に有意な差異や格差が認められる。しかし、このような格差が医療にどの程度及んでいるのかは明らかになっていない。
今回Andrey RzhetskyとRachel Melamedは、米国内の2000以上の郡の患者1億5000万人以上に関する保険会社の医療費支払申請データを用いて、広く使用されている約600の薬剤(オピオイド、抗うつ剤、抗炎症剤、降圧剤を含む)の処方割合を比較した。その結果、医療における既知の地域差を明らかにするには処方データがあれば十分なことが示され、この処方データによって、これまで知られていなかった薬剤の処方パターンが明らかになった。一部の地域では、低価格の選択肢より有効性が高いと証明されていなくても価格のより高い医薬品が選択される傾向が見られることが分かった。例えば、都市部、とりわけニューヨークからワシントンDCに至る回廊地帯と南東部の一部の地域では価格の高い薬剤が選択される傾向がある一方、北部ニューイングランド地方や中西部の一部の州、西部の一部の州では価格の低い薬剤が選択される傾向がある。
RzhetskyとMelamedは、医療のパターンに見られる差異は、根底にある社会経済的要因や商業的要因(医薬品の宣伝広告もここに含まれると思われる)の影響によるものであるという考えを示し、今回の研究によるデータが、医療政策におけるさまざまな介入の効果を評価する上で役立つと考えられる、と結論付けている。
doi:10.1038/s41467-018-06205-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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