【気候科学】温暖化が摂氏1.5度以上になればヨーロッパ地中海地方で山火事が増加する
Nature Communications
2018年10月3日
ヨーロッパ地中海地方では干ばつ状況の悪化が予測されており、このため21世紀末には山火事による焼失面積が今より増加することをモデル研究で明らかにした論文が、今週掲載される。今回の研究では、全球の気温が産業革命前よりも摂氏1.5度上昇すれば、山火事による総焼失面積が40%増加すると予測されている。ただし、このモデルは、気候と火災の関係に変化が生じることを考慮に入れれば、総焼失面積が過去に発表された予測を下回る可能性のあることも示唆している。
ヨーロッパ地中海地方は、火災が発生しやすく、とりわけ2017年の火災シーズンには、死者が出るなど多大な被害が生じた。この地域では、温暖で乾燥した気候が、火災の起こりやすい状況を生み出すことが予測されている。また、気候条件の変化は、火災の主要な燃料である植生を変化させる。しかし、山火事活動の予測の大部分では、気候、植生、および火災の関係が変化しないことが前提となっている。
今回、Marco Turcoたちの研究グループは、いくつかの地域気候モデルを用いて、2099年のヨーロッパ地中海地方における焼失面積の予測を行った。その際、全球平均気温が産業革命以前と比べて摂氏1.5度、2度、3度上昇する場合の各種シナリオにおいて、気候-植生-火災の関係が干ばつなどの要因によってどのように変化するのかを考慮に入れた。その結果、この関係を線形とした過去の研究による予測と比べて、山火事による焼失面積が半減することが明らかになった。しかし、焼失面積は温暖化に伴ってやはり増加し、1.5度上昇のシナリオでは焼失面積が現在の40%増(大部分がイベリア半島)、3度上昇のシナリオでは100%増と予測されている。
doi:10.1038/s41467-018-06358-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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