Research Press Release
【神経科学】ピック病由来のタウ繊維の構造を解明
Nature
2018年8月30日
ピック病は、前頭側頭型認知症を特徴とする神経変性疾患だ。この疾患におけるタウタンパク質の繊維の構造について報告する論文が、今週掲載される。
タウタンパク質の蓄積は、数多くの神経変性疾患の特徴となっている。タウタンパク質は脳内で繊維状の凝集体を形成しており、3つまたは4つの微小管結合リピート(3Rまたは4R)が含まれている。タウ繊維には、3Rタウまたは4Rタウ、あるいはその両方が含まれている。今回、Michel Goedert、Sjors Scheresたちの研究グループは、クライオ(極低温)電子顕微鏡法(cryo-EM)を用い、ピック病患者の前頭側頭皮質から採取したタウ繊維の構造を明らかにした。著者たちは、過去の研究で、アルツハイマー病患者から採取したタウ繊維の構造を明らかにし、3Rタウと4Rタウの両方が含まれていることを発表したが、今回の研究では、ピック病患者のタウ繊維の秩序立った核は、1種類の3Rタウの新規折りたたみ構造を有しており、アルツハイマー病患者のタウ繊維の折りたたみ構造とは異なることが判明した。
タウ繊維の疾患特異的な折りたたみ構造が同定されたことで、タウ繊維のさまざまなコンホメーションからそれぞれ独自の臨床表現型が生じるとする仮説の正当性を示す証拠が得られた。こうしたさまざまな折りたたみ構造と形状の差異を解明すれば、タンパク質の異常な凝集に関連する広範な疾患の解明が進むと考えられる。
doi:10.1038/s41586-018-0454-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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