【惑星科学】初期火星の地質学的進化
Nature
2018年6月28日
火星由来物質(直接年代測定された最古のものを含む)の分析から、火星の原始地殻が形成したのは今から45億4700万年前以前だったことを示唆する論文が、今週掲載される。この新知見は、火星の形成に関係する初期過程の一部(例えば、物質降着、核形成、マグマオーシャンの結晶化)が、太陽系の形成から2000万年経たないうちに完了した可能性がある。
火星への物質降着は、太陽系の形成から約500万年以内にほぼ完了していたことが、隕石記録から示唆されている。しかし、原始地殻の抽出につながるマグマオーシャンの結晶化は、それから約3000万~1億年後に起こったと考えられていた。
今回、Martin Bizzarroたちの研究グループは、火星の南半球の高地に由来すると考えられている隕石NWA 7034の試料から、7点のジルコン(耐熱性と耐腐食性が非常に高い鉱物)を抽出した。Bizzarroたちは、ウラン-鉛同位体年代測定法を用いて、これらのジルコンが約44億7600万年~44億2900万年前のものであることを明らかにした。そして、Bizzarroたちは、これらのデータとジルコンのハフニウム同位体組成を用いて、火星の原始地殻が45億4700万年前に存在しており、それから約1億年間存続し、その後、何らかの原因(天体の衝突かもしれない)で地殻の再形成が起こり、NWA 7034に含まれるジルコンが結晶化したマグマが形成したという考えを示している。
doi:10.1038/s41586-018-0222-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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