【遺伝学】中世ヨーロッパにおけるハンセン病の遺伝的リスク
Nature Communications
2018年5月2日
現代のハンセン病の遺伝的リスク因子が中世ヨーロッパ人のハンセン病にも関連していたことを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究によって、ハンセン病の原因細菌であるライ菌(Mycobacterium leprae)への感染の感受性が、約1000年を隔てて異なる地域で生きる2つの人間集団に共通する遺伝的リスク対立遺伝子によって少なくとも部分的に介在されることが示唆された。
今回、Ben Krause-Kyoraたちの研究グループは、中世ヨーロッパで地域的に流行したハンセン病の原因となった基礎的な遺伝的因子の解明を進めるため、デンマークのセントヨルゲン・ハンセン病病院に保存されている12~14世紀の69人のハンセン病患者の骨病変から採取された古いDNAの解析を行った。その結果、こうした中世のハンセン病症例では、現代と中世のヨーロッパ人対照群よりも、リスク対立遺伝子DRB1*15:01が検出される頻度の高いことが明らかになった。この対立遺伝子は、今でもM. leprae感染症が流行しているインド、中国、ブラジルにおいて最も強力な遺伝的リスク因子だ。
ハンセン病のリスク対立遺伝子であるDRB1*15:01は、中世と比べて頻度は若干低下しているものの、現代ヨーロッパ人においても保有者が多い。Krause-Kyoraたちは、DRB1*15:01が拮抗的な適応度効果と関連している可能性があり、これがヨーロッパ人の遺伝子プールからDRB1*15:01が完全に消えるのを阻んできたと推論している。
doi:10.1038/s41467-018-03857-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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