【生態学】最近の海の熱波によってグレートバリアリーフのサンゴ群集に生じた変化
Nature
2018年4月19日
グレートバリアリーフのサンゴが、2016年の長期間の海の熱波を受けて壊滅的な大量死を起こし、世界最大のサンゴ礁系を形成する3863か所のサンゴ礁の約3分の1の生態系機能が変化した。今週Natureに報告されるこの新知見により、サンゴ生態系の崩壊のリスクを評価する必要性がさらに高まっており、特に産業革命前からの気温上昇を1.5~2℃までに抑えるための全球的な気候変動対策が失敗に終わればなおさらのこととなる。
今回、Terry Hughesたちの研究グループは、2016年に極端な海の熱波が起こった後の、2300キロメートルにわたるグレートバリアリーフの熱への曝露と、その結果生じたサンゴの死滅の地理的パターンのマップを作成した。これにより、熱ストレスを受けた直後に死滅したサンゴが多かった一方で、褐虫藻(大部分の造礁サンゴの中に生息する黄褐色の共生藻類)が枯渇した後にゆっくりと死滅したサンゴもあったことが明らかになった。サンゴの死滅は、白化量および熱への曝露の程度と高度に相関しており、グレートバリアリーフの北部の3分の1が最も大きな影響を受けた。このサンゴの大量死により、数百か所の個別のサンゴ礁に関して、サンゴ群集の組成と機能的形質が激変し、成熟したサンゴ群集と多様性を有するサンゴ群集が劣化していた。
Hughesたちは、白化が起こる前の状態までサンゴ群集が完全に回復する可能性は低く、その理由として、多くの残存しているサンゴのコロニーでもサンゴの死滅がゆっくりと進んでおり、成長の速いサンゴ種において死滅したサンゴが置き換わるには少なくとも10年かかることを指摘している。また、グレートバリアリーフは、2017年にも深刻な白化に見舞われ、さらに大きな被害を受けた。そのため、気候変動が安定するまで熱帯全体のサンゴ礁が劣化を続ける可能性は高く、その間に残存するサンゴ集団が熱に強いサンゴ群集を再構成するだろう、とHughesたちは結論付けている。
doi:10.1038/s41586-018-0041-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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