【遺伝学】後期ネアンデルタール人の来歴に関する新知見
Nature
2018年3月22日
3万9000~4万7000年前に生きていた後期ネアンデルタール人(5体)のゲノムについて説明した論文が、今週掲載される。
ネアンデルタール人の遺伝的多様性や、後期ネアンデルタール人集団が最後に初期現生人類と相互に影響し合っていた頃から最終的に消失するまでの間の後期ネアンデルタール人集団間の関係は、ほとんど解明されていない。
今回、Mateja Hajdinjakたちの研究グループは、ベルギー、フランス、クロアチア、およびロシアのコーカサス地方で採取された骨と歯の断片から、5人の後期ネアンデルタール人のゲノムの塩基配列を解読し、解析した。Hajdinjakたちは、他のネアンデルタール人ゲノムと比較することで、全ての後期ネアンデルタール人が約15万年前にシベリアの共通祖先から分岐しており、後期ネアンデルタール人における近縁性は地理的な隣接性と相関していると推定した。また、今回の分析で、ネアンデルタール人から初期現生人類への遺伝子流動の大部分が、今回の分析対象となった後期ネアンデルタール人から分岐した単一または複数の集団が起源となっており、その分岐が起こったのは、少なくとも7万年前だったことが示唆されている。
Hajdinjakたちは、この5人のゲノムをそれより古い時代のコーカサス地方で見つかったネアンデルタール人のゲノムと比較した上で、ネアンデルタール人の歴史の末期にかけて、コーカサス地方またはヨーロッパ全土で集団の入れ替わりがあったという考えを示している。それは、気候の顕著な変動があった6万~2万4000年前のことで、その当時の北ヨーロッパにおける極端な寒冷期が引き金となってその地域のネアンデルタール人集団が絶滅し、その後、南ヨーロッパまたは西アジアからの再定住が起こった可能性がある。
doi:10.1038/nature26151
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