Research Press Release
土壌微生物由来の新しい抗生物質
Nature Microbiology
2018年2月13日
土壌細菌から新しい種類の抗生物質を発見したことを報告する論文が、今週掲載される。このmalacidinと名付けられた新種の抗生物質は、数種類の多剤耐性病原菌に殺菌作用を示し、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)皮膚感染のラットモデルに対しても効果があった。
抗生物質耐性菌感染の増加と闘うには、新しい抗生物質が必要である。認可された抗生物質の大半はもともと微生物から抽出されたものであり、さまざまな環境由来の試料からの新薬発見に関心が集まっている。
Sean Bradyたちは、米国全域で集めた1000を超える土壌試料から細菌DNAを抽出して塩基配列を解読し、抗生物質の新しいファミリーとなるmalacidinの生産に関わる一揃いの遺伝子を発見した。malacidinは、他の多くの抗生物質とは違った機序で細菌を殺す。細菌の細胞壁の重要部分を攻撃するのだが、実験室では、微生物はこの作用に対して耐性を生じなかった。また、Bradyたちが利用したのはハイスループット塩基配列解読に基づくスクリーニング手法で、最初に微生物を増殖させる必要を回避できるので(細菌の大多数の種は、実験室での培養ができないため)、多様な環境試料から新薬候補を素早く見つけ出すのに利用できる。
doi:10.1038/s41564-018-0110-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
人工知能:DeepSeek-R1 AIモデルの背後にある科学Nature
-
医療科学:医療を導くAIツールNature
-
気候変動:温暖化によるサンゴ礁の緩衝機能の危機Nature
-
神経科学:繰り返される頭部外傷は若年アスリートの脳細胞を変化させるNature
-
古生物学:初期のドーム頭を持つ恐竜Nature
-
健康:長期的なコロナウイルス感染症の後遺症は月経障害と関連するNature Communications