Research Press Release

ヘビに咬まれた傷の治療

Nature Medicine

2011年6月27日

リンパ管のポンプ作用を妨げる薬剤があれば、ヘビに咬まれた傷の治療に役立つ可能性があるという。リンパ系を通じてヘビ毒が運ばれるのをこの薬を使って遅らせられれば、ヘビに咬まれても治療を受けるための時間にゆとりができるかもしれない。

世界では毎年、ヘビに咬まれたために10万人が死亡し、40万人が体の一部を切断する羽目になっている。多くのヘビ毒には巨大な毒素分子が含まれるが、これらは、咬まれた部位からリンパ管を経由して輸送されないかぎり、血液中には入れない。

D van Heldenたちは、ラットにヘビ毒を注射したときに、心不全の治療に使われる化合物、ニトログリセリンを含んだ軟膏を塗ると、生存期間が50%長くなることを発見した。この軟膏によってラットリンパ系でのヘビ毒の輸送を遅らせることができたので、健康なボランティア被験者に、この軟膏を放射性標識したトレーサーと一緒に塗布したところ、ヒトのリンパ系でも同様にトレーサーの輸送が遅くなることがわかった。これらの知見から、ヒトに致命量のヘビ毒が入った場合にも、この軟膏を使えば生存時間が50%延びて、医学的処置を受けられる可能性が高まるかもしれない。

doi:10.1038/nm.2382

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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