「先行対処的な警察行為」は重大犯罪の通報を増やしている可能性がある
Nature Human Behaviour
2017年9月26日
軽微な法令違反に対する組織的および積極的な警察活動が低調になると、重大犯罪の申し立てが少なくなる可能性があることを示唆した論文が、今週掲載される。この知見は、権力と法令遵守の関係に対する従来の考えと対立する。
過去数十年にわたって、「先行対処的な警察行為(proactive policing)」と呼ばれる戦略は、重大な犯罪行為の発生を抑える策として広く受け入れられてきた。重大犯罪の抑止策には、地域のパトロールに加えて、職務質問、出頭命令、微罪による逮捕の積極的な実施などが含まれる。しかしながら、それらの効果については今日でも議論が続いている。「先行対処的な警察行為」は、地域によっては影響が極めて大きく、差別につながりかねないことから、市民の厳しい監視の目にさらされてもいる。
今回の研究でChristopher SullivanとZachary O’Keeffeは、ニューヨーク市警察(NYPD)が所有する2013~2016年の犯罪データをベースラインとして、NYPDがエリック・ガーナー窒息死事件後に起きた、警察官による暴力への抗議の高まりを受けて「先行対処的な警察行為」が事実上停止した2014年後半~2015年初頭の期間中の特定の7週間と比較した。その結果、「先行対処的な警察行為」の実施と重大犯罪の申し立ての間には因果関係があるという結論が導かれた。重大犯罪(殺人、強姦、強盗、重暴行、住居侵入強盗、車両の重窃盗)に対する市民からの申し立ては、「先行対処的な警察行為」の休止中には3~6%低下したことが明らかとなった。また(例えば、市民による警察への信頼不足のために)通報のなかった犯罪は、結果にバイアスをもたらさなかったことも判明した。
研究グループは、警察行為の戦略次第では、重大犯罪行為の意図しない発生が引き起こされる恐れがあると結論しており、「先行対処的な警察行為」の改革が、警察活動が活発な地域における重大犯罪の発生率の減少および福祉の向上に実効的につながる可能性があると推測している。一方で、先行対処的な警察行為の減少の長期的な影響、また今回得られた知見がニューヨーク市以外でも当てはまるかどうかについては、さらなる研究が必要である。
doi:10.1038/s41562-017-0211-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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