【考古学】ネアンデルタール人によるタール製造プロセスの進化
Scientific Reports
2017年9月1日
ネアンデルタール人がタールを製造する能力が進化した過程について1つの仮説を示した論文が、今週掲載される。
柄付け(骨や石に柄をつけて武器や道具を作り出す作業)に用いられる接着剤の製造と使用が、ネアンデルタール人と初期現生人類の認知能力と技術力に関する論争の焦点になっている。接着剤は、現在知られているものの中で最初期の変革技術の1つであり、タールの製造には、少なくとも20万年の歴史がある。しかし、更新世(約258万8000年前から1万1700年前まで)に陶器を使わずにタールがどのように製造されたのかは明らかになっていない。これまでにも無陶器技術又は旧石器時代の技術を用いてタールを製造する実験的な試みがあったが、道具の柄付けを効果的に行うにはタールの収量が少なすぎた。
今回、Paul Kozowykたちの研究グループは、旧石器時代のものと考えられる技術の数種類のバリエーションを用いて、カバノキの樹皮の乾留によってタールを製造する試験を行った。その結果、ネアンデルタール人が生きていた時代に適合した無陶器技術によってタールを製造することができ、樹皮のロールを熱い灰の中に入れる方法によって小型の道具の柄付けに十分な量のタールが得られることが明らかになった。そして、この製造プロセスを数回繰り返すことで考古学的記録に示される収量を達成できると考えられている。Kozowykたちは、タール製造の進化過程を示し、製造プロセスの改良によってタールの収量効率が高まったという仮説を提示している。この仮説は、中期旧石器時代のネアンデルタール人が利用できた技術と資源とも矛盾しない。
今後も研究を続けてタール塊の組成と性質を調べることは、タール技術の開発史を詳しく解明する上で役立つ可能性がある。
doi:10.1038/s41598-017-08106-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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