氷惑星が溶ける時、ちょうど良い気候はやって来ない
Nature Geoscience
2017年8月1日
氷惑星と氷衛星の中には、その主星が明るさを増すことで、居住可能な状態を経ることなく急激に氷室状態から温室状態へと変化するものがあるとの報告が、今週のオンライン版に掲載される。太陽系内のエウロパやエンケラドスおよび太陽系外氷惑星を含むそのような氷の世界は、覆われた氷が溶けた後は居住可能になりうるとこれまでは考えられていた。
太陽のような恒星は長期にわたって輝いている。初期地球のように、若く暗い恒星の周りで冷たく氷に覆われた状態から始まった惑星は、恒星が輝きを増すにつれて結果的に温暖で居住可能な状態に変化すると思われていた。地球はその歴史を通じて地質活動が続き、温室効果ガスの火山からの放出と風化過程が気候を温暖化させ安定化させてきた。しかし、多くの小さい氷惑星と衛星ではこのような過程がなく、気候の進化は主星から受け取るエネルギーにのみ依存している。
Jun Yangたちは、全球気候モデルを用いて氷惑星の気候進化をシミュレーションした。そして、大気中の温室効果ガスが惑星を暖める効果がない場合は、惑星を溶かすために必要なエネルギーは高く、そのために一旦覆われた氷が溶けると惑星は急激に温室状態に変化し、海洋は蒸発して大量の水が失われることを発見した。その結果、惑星は、我々が知るような水に依存した生命は生息できない状態となる。
同時掲載のNews & Views記事でAndy Ingersollは、次のように述べている。「氷惑星を生息可能な状態にすることは、氷を溶かすことほど単純ではなく、多くの氷天体は、寒すぎる状態から暑すぎる状態へと、ちょうど良い状態を通り越して変化するようだ」。
doi:10.1038/ngeo2994
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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