Research Press Release

サルでエボラウイルスが持続感染

Nature Microbiology

2017年7月18日

エボラウイルス疾患を生き延びて症状もなくなったアカゲザルから、エボラウイルスの持続感染が検出されるとの報告が寄せられている。アカゲザルはエボラウイルスに対してヒトとよく似た反応を示すので、アカゲザルを利用したこの実験モデルは、持続性のエボラウイルス疾患やそれに伴う長期的影響を研究し、新しい治療法を開発するための基盤となるだろう。

エボラウイルスの持続感染とは、エボラウイルス疾患を乗り切って症状も見られなくなった生存者の特異的組織(眼や脳、精巣など)にウイルスが存在することを言う。2013~2016年にかけての西アフリカでの流行は規模、範囲共にかつてない大流行で、それ以来、持続感染とその長期的な影響(視力の喪失、頭痛、関節痛など)が公衆衛生上の懸念すべき問題となっている。さらに、病気の長期的な症状の他にも持続感染が問題となるのは、表面的には治癒したように見える人からウイルスが他に伝わるため、新たな感染を生む可能性があるからである。しかし、これまでのところ、エボラが宿主の体内でどのように広がり、生存者に残るのかは、適切な動物モデルがないために研究できなかった。

Xiankun Zengたちはエボラウイルスが血管を通して広がること、エボラ疾患から生き残った症状のないアカゲザルの眼、脳、精巣から検出されることを明らかにした。眼のウイルスは、表面にCD68タンパク質を発現するマクロファージで見つかった。そこが、潜伏期にウイルスが隠れる場所かもしれないとZengたちは述べている。また、実験段階の抗ウイルス治療を受けたサルでもウイルスの持続感染が起こっており、これらの治療ではエボラウイルスが完全には除去されない可能性があることが分かった。

doi:10.1038/nmicrobiol.2017.113

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

「注目のハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度