【惑星科学】火星の居住可能性は地表に含まれる化合物のために低くなっていた
Scientific Reports
2017年7月7日
火星の表面では過塩素酸塩化合物が存在しているために殺菌作用が生じているという考えを示した論文が、このたび掲載される。
これまでに火星の表面で過塩素酸塩類が検出されたという研究報告があり、それが火星の居住可能性にどのような影響を与えるのかという疑問が生じている。
今回、Jennifer WadsworthとCharles Cockellは、過塩素酸塩類の反応性の有無と過塩素酸塩類が枯草菌の生存率に及ぼす影響を調べた。枯草菌は宇宙船に紛れ込んでいることが多いのだ。火星の表面での条件に近づけて、過塩素酸マグネシウムに短波紫外線を照射する実験では、過塩素酸マグネシウムが殺菌作用を持つようになった。また、火星の表面レゴリス(ちり、土、岩石破片が混ざったもの)に存在する過塩素酸塩類の濃度を再現して火星と同じような条件にした上で枯草菌を放置する実験では、枯草菌の栄養細胞の生存能力が数分以内に失われた。WadsworthとCockellは、火星表面を構成する別の2つの物質(酸化鉄と過酸化水素)が過塩素酸塩類と相乗的に作用するという考えを示しており、その場合の細胞死は、過塩素酸塩類のみが存在して紫外線照射があった場合の10.8倍とする。
火星の表面は有毒なのではないかという疑いは以前からあったが、今回のWadsworthとCockellの観察結果は、火星の表面がオキシダント、酸化鉄、過塩素酸塩類、紫外線照射という有毒要因のために細胞にとって極めて有害な状態になっていることを示唆している。今回の研究によって得られた知見は、惑星の保護、とりわけロボットと人間による探査によって火星が汚染される可能性にとって重要な意味を持つかもしれない。
doi:10.1038/s41598-017-04910-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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