【神経科学】2つの神経過程を両立させることで優れた聴力が得られる
Nature Communications
2017年6月28日
人間の発話に似た音に対する高齢者と若年成人の脳の応答に差があることが判明し、これが加齢性難聴の改善策を正しい方向に進めるための知見でなる可能性が浮かび上がった。この研究結果について記述された論文が、今週掲載される。
このMolly Henryたちの論文では、協調的に作用して聴覚刺激のわずかな違いを感知する能力を高める2つの脳活動パターンが説明されており、この過程が年齢によって異なる実態が明らかになっている。今回の研究では、20名の若年成人(18~31歳)と20名の高齢者(61~77歳)が、発話と同じ時間特性を有する連続したリズムパターンで提示される特定の聴覚信号を感知する聴覚課題に取り組んだ。この聴覚信号を感知するには、安定した無関係なリズムの抑制と目的とする刺激の強化が必要とされる。発話と類似した時間特性を有する音を若年成人が聴くと、その脳は自然にリズムと同調し、この同調が、脳が無関係な情報を除去する第2の過程によって調節されることが分かった。これに対して、高齢者は、脳を自然に同調させる能力が低く、無関係な情報の除去も難しくなっているが、若年成人とは異なる神経的方法によって「雑音」の除去がなされているという考えが示されている。
これらの新知見を総合すると、聴力の精度が2つの補完的過程に依存していることが示されている。今回の研究は、高齢者が経験する難聴の原因が、音に対する同調能力の減退だけでなく、無関係な聴覚情報を阻害する能力の変化にもあることを示唆している。このことからは、この2つの過程のバランスを回復することが加齢性難聴を改善する新しい方法となる可能性が示唆されている。
doi:10.1038/ncomms15801
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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