【進化】ダーウィンの「最も奇妙な動物」を進化系統樹上で位置づける
Nature Communications
2017年6月28日
絶滅した南米在来の有蹄動物Macrauchenia patachonicaのほぼ完全なミトコンドリアゲノムについて報告する論文が、今週掲載される。チャールズ・ダーウィンが最初に化石を発見して以来生物学者の頭を悩ませてきた動物群の進化的関係に関する手掛かりが、この古いDNAによってもたらされた。
M. patachonicaの子孫は現代に生き残っておらず、風変わりな形質の組み合わせ(例えば、マクラウケニアはラクダのような胴体とバクのような鼻を持っている)のために古典的な分類学による分類法では対応できない。これまでのところ、古代のコラーゲンに由来するタンパク質のアミノ酸配列の解析結果から推定されたM. patachonicaと現生哺乳類の関係が最も正確なものと考えられている。これまでに古代のDNAを使ってM. patachonicaの進化史の解明を進める試みがなされてきたが、DNAの劣化と近縁種に由来する標準ゲノムのないことが障害となっていた。
今回、Michael Hofreiterたちの研究グループは、新しい塩基配列解読技術とマッピング技術を用いて、マクラウケニアの化石試料から採取された古代のDNAからミトコンドリアゲノムを組み立てて、こうした問題点を克服した。そしてHofreiterたちは、このDNA塩基配列を系統発生解析に用いて、マクラウケニアの進化的関係を評価した。その結果、滑距目(マクラウケニアを含む)が奇蹄目(ウマ・バク・サイ)の姉妹分類群であることを示すプロテオミクスの証拠が裏付けられ、これらの分類群の分岐が約6600万年前に起こったことが明らかになった。
今回の研究は、近縁な現生種による標準ゲノムがなくても古代のゲノムを復元できることを実証している。しかし、この他の南米固有の有蹄動物の進化的関係を解明するためには、さらなる研究が必要となっている。
doi:10.1038/ncomms15951
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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