気候変動がエチオピアコーヒーに波乱を巻き起こす
Nature Plants
2017年6月20日
気候変動は、今世紀末までに、エチオピアのコーヒー産地の半分ほどをコーヒー栽培不適地に変えかねない、という論文が、今週掲載される。しかし、悪い話ばかりではない。その研究は、コーヒー産地の移動が植林と森林保全を伴えば、コーヒー栽培地の総面積が4倍に拡大する可能性があることも示唆しているのである。
世界のコーヒー豆収穫量の過半を占めるアラビカ種(Coffea arabica)はエチオピア原産で、同国の輸出額の4分の1を稼ぎ出している。そのため、気候変動がコーヒー生産に与える影響を理解しなければならないわけであるが、気候変動の影響を地域レベルで予測することは困難である。
Justin Moatたちは、異なる移動シナリオを展開し、世界気候研究計画(WCRP)が開発した高分解能の気候データおよび最新の衛星画像を利用して、1960年代から21世紀中までの4期間に関してコーヒー適性の予測を得た。これによってエチオピアは、1 km2ごとに、コーヒー栽培に不適、最低限、普通、良好、最高のいずれかに色分けされた。続いて研究チームは、2013~2016年の間に、約3万kmを車と徒歩で踏破して1800カ所以上を視察することにより、そのモデリングの正確度を検証した。
その結果、現在のコーヒー産地の39~59%が今世紀末までにコーヒー農業に不適となる可能性があることが分かり、気候変動が引き起こす脅威の甚大さが明確に示された。しかし、研究チームは、気候変動に伴う気温の上昇により、同国の別の地域がこの先20年でコーヒー農業に組み込まれる可能性があることも示唆している。最後に研究チームは、野生のアラビカ種コーヒーの遺伝的多様性を保存するための保護区として最も有効に機能することができる森林地域を割り出した。
doi:10.1038/nplants.2017.81
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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