【生物物理学】トカゲの皮膚の模様が形成される過程
Nature
2017年4月13日
ホウセキカナヘビ(Timon lepidus)の皮膚に見られる独特の模様はセルオートマトン(単純な規則に基づいたモデルで、通常はコンピューター科学に関係している)によって決まっていることを明らかにした論文が、今週掲載される。この研究では、新生仔から成体に至る間のトカゲの体色変化動態の分析が行われ、皮膚の模様の形成機構がシマウマやヒョウなど他の動物と異なることが明らかになった。
ホウセキカナヘビの皮膚は、生まれた時には茶色の地に白い斑点模様だが、成体になると緑と黒の迷路模様になる。今回、Michel Milinkovitchたちの研究グループは、この皮膚の色のパターンの形成過程を解明するため、高分解能ロボットシステムを用いて、3匹の雄のホウセキカナヘビを生後2週間から3~4年までの期間中に複数の時点でスキャンした。多くの動物の場合には個々の細胞内での相互作用によって体色のパターンが決まるのに対して、ホウセキカナヘビの場合には1つの鱗の色が周辺の鱗の色によって決まることが明らかになった。Milinkovitchたちは、この過程を生きたセルオートマトンとして説明している。コンピューターの世界では、セルオートマトンは、ユニットが相互につながってできており、個々のユニットの挙動は隣接するユニットの状態に依存している。
Milinkovitchたちは、約1,500個の背側の鱗の色が4年間にどのように変化するのかを観察した。この色の変化は一生続いたが、高齢になると色が変化する速度は遅くなった。Milinkovitchたちは、成体になって見られる緑と黒の迷路模様は、隠蔽擬態の可能性があり、性選択に関係しているかもしれないという見解を示している。
doi:10.1038/nature22031
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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