【神経変性】低分子を用いた神経変性疾患の治療戦略
Nature
2017年4月13日
アタキシン-2(ATXN2)タンパク質のレベルを低下させる治療法が筋萎縮性側索硬化症(ALS)と脊髄小脳失調症2型(SCA2)のマウスモデルの症状の改善に役立つことを報告する2編の論文が、今週のオンライン版に掲載される。この研究結果は、ALSとSCA2やその他の神経変性疾患の治療法の開発に役立つことが期待されている。
これまでの研究でアタキシン-2タンパク質の異常がALSとSCA2の両方に関係していることが明らかになり、アタキシン-2の産生に影響を及ぼすことを標的とした低分子を用いた治療ができないかどうかが研究課題になっている。今回、Stefan Pulstたちの研究グループは、その1つとしてアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO7)について論じている。ASO7は、2種類のSCA2のマウスモデルにおいて、アタキシン-2のレベルを低下させ、異常なニューロンの発火を正常に戻し、運動機能を改善した。一方、Aaron Gitlerたちの研究グループは、ASO7に類似したアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた治療の実験で、ALSのマウスモデルのアタキシン-2レベルが低下し、運動機能が改善し、寿命が延びたことを明らかにした。
ほとんどのALS患者の脳と脊髄には、毒性を生じさせる可能性のあるタンパク質TDP-43の凝集体がある。過去の酵母とショウジョウバエの研究では、アタキシン-2のレベルを低下させるとTDP-43の毒性が抑制されることが明らかになっている。Gitlerたちの研究では、ALSの症状を示すマウスを用いた実験で、アタキシン-2のレベルを低下させるとTDP-43凝集体の蓄積を減らせることが明らかになった。TDP-43凝集体は、前頭側頭型認知症患者の約半数からも見つかっていることを考えると、アタキシン-2を標的とする治療法が神経変性疾患に幅広く有効性を示す可能性があるとGitlerたちは推測している。
doi:10.1038/nature22038
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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