微生物学: マウスにおける周産期から離乳時までの抗生物質使用の影響
Nature Communications
2017年4月5日
マウスモデルによる研究で、周産期から離乳時までの母マウスへの低用量ペニシリンの投与が、仔マウスの腸の微生物相、脳の生理学的性質、社会的行動に持続的な影響を及ぼすこと、また、プロバイオティクス(健康に良い効果をもたらすとされる細菌)を同時に投与すると、これらの変化の一部が防止されることが分かった。この結果を報告する論文が今週掲載される。
抗生物質を若齢期に使用すると、長期間にわたり望まない効果がある可能性を示す証拠が集まってきている。また、動物での研究から、高用量の抗生物質の投与により、行動や脳の神経化学的性質に長期的な影響があることが示されている。
John BienenstockとSophie Leclercqたちは、母マウスに周産期(分娩の1週間前)から離乳までの期間(分娩後3週間)、低用量ペニシリンの投与を行い、仔マウスに影響が見られるかどうかを調べた。このようなペニシリンの投与により、6週齢の仔マウスでは腸の微生物相の組成の変化、血液脳関門の完全性の増強、ある脳内サイトカイン(免疫応答を調節する分子群)のレベル上昇が引き起こされることが分かった。さらに、このような仔マウスは、成体になると社会的行動の減少を示し、成体雄マウスでは不安様行動の減少や攻撃行動の増加が引き起こされた。ペニシリンとプロバイオティクス(Lactobacillus rhamnosus JB-1)を同時に投与すると、これらの変化の一部が部分的に防止された。
著者たちは、プロバイオティクスの防止効果については、一部の解析のサンプルサイズが小さいため、さらなる研究で検証されるべきだと述べている。そうではあるが、これらの知見は、神経精神疾患の発症に周産期や若齢期の抗生物質使用が役割を果たしている可能性について、またこれらの変化のプロバイオティクスによる軽減の可能性について、さらに研究を行う必要性を示している。
doi:10.1038/ncomms15062
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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