【医学研究】CRISPR遺伝子編集による筋肉の修復
Nature Communications
2017年2月15日
CRISPR/Cas9遺伝子治療システムの新たな応用によって、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのマウスモデルにおける筋肉の異常を修正できることが実証された。今回の研究で遺伝子治療の適用範囲が広がり、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの原因である遺伝的異常をこれまでよりも多く標的にできるようになったことを報告する論文が、今週掲載される。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、主に男の新生児が発症し、ジストロフィンというタンパク質をコードする遺伝子の異常を原因とする。ジストロフィンを欠損すると、骨格筋と心臓が変性する。CRISPR/Cas9システムのような遺伝子編集ツールは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療にある程度有望なことが明らかになっているが、ジストロフィンの異常の原因となるさまざまな遺伝的変異に対応する治療法の開発は困難を極めている。
今回、Jeffrey Chamberlainの研究チームは、CRISPR/Cas9の応用を拡張して、ジストロフィンの複数の異常を修正する方法を開発し、マウスを使って検証した。この治療法を用いたところ、筋肉と心臓におけるジストロフィンの発現が、筋肉の機能が改善する程度まで回復した。この結果は、CRISPR/Cas9がこれまでより広範なデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者における遺伝的変異の治療に適している可能性があり、その他の心臓と筋肉の変性疾患にも同様に適用可能なことを示唆している。
doi:10.1038/NCOMMS14454
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
素粒子物理学:CERNで観測されたつかみどころのない物質と反物質の非対称性Nature
-
古生物学:獲物に忍び寄るための古代爬虫類の特殊なヒレNature
-
経済学:移民と現地人の賃金格差に対処するNature
-
惑星科学:惑星系の誕生の瞬間をとらえるNature
-
神経科学:老化と神経変性疾患のバイオマーカーを解明するNature Medicine
-
健康:健康な高齢化における世界的な格差の要因の評価Nature Medicine