Research Press Release
がん治療への抵抗性の解明
Nature Medicine
2011年3月22日
ある種の乳がんの治療に対する抵抗性の原因となる機構が1つ明らかになったようだ。この知見は、薬剤耐性を克服する方法として臨床に役立つかもしれない。トラスツズマブ(ハーセプチン)はある種の乳がん患者に用いられる抗体だが、この薬に反応するはずの患者が必ず反応を示すわけではない。このような治療抵抗性の原因となる機構は不明で、しかもさまざまに異なる場合が多いため、その正体を明らかにして標的とするのは難しい。D Yuたちは、チロシンキナーゼc-SRCが多数のトラスツズマブ抵抗性経路のカギとなる調節因子であることを発見した。c-SRCはがん細胞で広く活性化されていて、抵抗性推進の機構は内在型、獲得型さまざまだが、本来は抗体に反応性を示す乳がん細胞でc-SRC活性を上昇させると、トラスツズマブ抵抗性が生じる。トラスツズマブ投与とあわせてc-SRCを阻害すると、トラスツズマブ抵抗性の腫瘍がトラスツズマブ感受性に変化することから、この手法を利用してさまざまなタイプのトラスツズマブ抵抗性を克服できる可能性が明確になった。
doi:10.1038/nm.2309
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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