実験室で進化するリズム
Nature Human Behaviour
2016年12月20日
音楽のリズムが進化することが実験室で確認され、音楽の普遍的な特徴がどのように変化していくのかについての報告が、オンラインで発表される。
ヒトの音楽には世界中に多種多様なものがあるが、文化圏の違いにかかわらず類似性が認められる。また、ヒトの音楽は本質的に構造を持つが、そうした構造的規則性が生まれる仕組みは不明である。
この現象を調べるために、Andrea Ravignaniたちの研究チームは、音楽の進化のシミュレーションを実験室で行った。まず実験参加者の第1グループが、ランダムに作られたドラムの音の連なりを聞いて、それを真似るように指示された。次に第2のグループが、第1グループの模倣演奏を聴いて、その音をコピーするように指示された。その結果、時間の経過とともに、また模倣の回数が増すほど、参加者は、最初に聴いたランダムな音の連なりを、リズミカルな構造化されたパターンへと変えていくことが分かった。ドラミングのパターンは、学びやすいリズムへ、かつ2拍または3拍のビートへのグループ分け、また規則的な間隔が置かれた基底ビートといったワールドミュージックにみられるような普遍的な規則性の全てを含むリズムへと変わっていくことが判明した。
今回の研究は、作業記憶やカテゴリー知覚能力などの基本的な心理的メカニズムが、人から人への伝達を経てどのように大規模な音楽的普遍性を生成していくかということを示していると研究チームは結論づけている。
doi:10.1038/s41562-016-0007
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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