Research Press Release
【環境】サハラ砂漠の風が北アフリカの塵放出量に影響する
Nature
2016年3月24日
北アフリカの塵放出量の変動が、サハラ砂漠における地上風のパターンによって強く影響されていることを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、大陸での風速に影響を与える気象現象(例えば、北大西洋振動、エルニーニョ/南方振動、西アフリカのモンスーン)によって塵放出が促進されることがある点も明らかになった。
今回、Amato Evanたちは、サハラ砂漠の地上風のパターンにサハラ砂漠の地形が反映されていることを明らかにし、こうした風の変動モードを用いて、1851年以降の塵放出量を推定した。その結果、塵放出の多い状態が持続した2つの時期(1910年代から1940年代までと1970年代から1980年代まで)と塵放出が少なかった3つの時期(1860年代、1950年代、2000年代)が特定された。
さらに、Evanたちは、複数の気候モデルを用いて、21世紀において温室効果ガス排出量の増加によってわずかだが統計的に有意な塵放出の減少があるという見解を示している。そうした塵放出の減少は、大気環境の改善と降水量の増加を伴うため、ヒトの健康にプラスの影響を与える可能性があるとEvanたちは考えている。しかし、塵放出量が減少すると、熱帯北大西洋の温暖化が、温室効果ガス排出量増加だけによる予測以上に増大し、ハリケーンが増える可能性があるとEvanたちは結論づけている。
doi:10.1038/nature17149
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
古生物学:インドで発見された化石は新属新種の古代の大蛇だったScientific Reports
-
生体力学:昆虫の翅のヒンジは筋肉によって制御されているNature
-
気候変動:気候変動に伴う経済的コストNature
-
生物学:闘争・逃走系の起源Nature
-
材料:接着剤が海洋性軟体動物種の追跡に役立つNature Communications
-
気候変動:海洋での致死的な極端低温事象の強度と頻度が高まっているNature Climate Change