【肥満】肥満の予防と治療のための標的候補
Nature
2016年5月12日
ペプチドの一種であるニューロテンシン(NT)が脂肪の吸収と肥満を直接的に促進することが、マウスとショウジョウバエとヒトから得たデータによって示唆されることを報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。この結果は、中年層の人々がその後の人生で肥満になるリスクについて、プロNT(安定したNT前駆体)の濃度の高い場合が低い場合の2倍であることも明らかにしている。そのため、NTが肥満の予防と治療のための標的候補となる可能性が生まれている。
今回、Mark Eversたちは、高脂肪の食餌を与えられたNT欠損マウスが野生型の同腹仔より脂肪の吸収が少なく、脂肪の大量摂取に関連する他の状態(例えば、インスリン抵抗性の亢進)になりにくいことを明らかにし、マウスとショウジョウバエの場合には代謝を調節する非常に重要な酵素(AMPK)の活性がNTによって阻害されることも明らかにした。この経路は、進化の過程を通じて保存され、摂取された脂肪が必ず効率的に吸収されるようにしている可能性がある、とEversたちは考えている。また縦断的研究における4,632人の成人の解析では、プロNT濃度がボディマス指数と胴囲と有意に関連していることも明らかになった。肥満でない人々がその後の人生で肥満になる確率はプロNT濃度が上位4分の1に入っている場合が下位4分の1に入っている場合の2倍になっていた。プロNT濃度の高低によって子どもと青年が将来的に肥満になることを予測できるのかどうかを明確にするには、さらなる研究が必要だとEversたちは指摘している。
doi:10.1038/nature17662
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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