【惑星科学】月の溝状地形を生み出した原始惑星との衝突
Nature
2016年7月21日
月で最大の衝突盆地の1つが特異な構造を有しているが、衝突した原始惑星から放出された天体によってできた構造であることを示唆する論文が掲載される。今回の研究で新たに行われた計算によれば、この天体の直径は約250 kmで、これまで考えられていたよりも大きい。この新知見は、約40億年前にさまざまな惑星と衝突して月の表側の形状を生み出したEベルトという小惑星帯に含まれる天体の大きさに関する手掛かりとなっている。
月面の「雨の海」という領域は、直径1,250 kmのクレーターを数多くの溝状地形が取り囲む独特なパターン(Imbrium Sculpture)になっている。これらの溝状地形の一部は、天体との衝突地点で発掘された物質ではなく、この巨大なクレーターを生成した天体の破片によって掘り返されたものと考えられる、という見方をPeter SchultzとDavid Crawfordが提唱している。このパターンについては、数値シミュレーションと実験室内での衝突シミュレーションに基づいた評価が行われ、この天体の直径が原始惑星ベスタの直径の約半分と推定された。
SchultzとCrawfordは、月と衝突した天体がEベルトの原始惑星集団に属していたことがあり、この天体の複数の大きな破片が衝突の際に宇宙空間に放出され、内部太陽系全体でさらに多くのクレーターを生成したという結論を示し、それに加えて、月と衝突した天体の推定サイズをもとに41~37億年前の後期重爆撃期に月とその他の惑星を大きく破壊した天体がこれまで考えられていたよりも大質量だったと推測している。
doi:10.1038/nature18278
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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