【進化】アフリカからの人類の移動の波を起こした極寒な気候
Nature
2016年9月22日
過去125,000年間の人類のアフリカからの分散パターンに4回の波があったことを報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。こうした人類の移動は、地球の軌道変動と結びついた気候変動によって起こったことが明らかになった。
過去の研究では、ホモ・サピエンスのアフリカからの分散の時期が、更新世後期(126,000年~11,000年前)の地球の軌道変動を原因とする気候変動の影響を受けていたという考えが提案されていた。しかし、重要度の高い地域の古環境データがわずかしかないことと気候シミュレーションと化石記録と考古学記録の年代決定の不確実性のために、この分野における研究は停滞していた。
今回、Axel TimmermannとTobias Friedrichは、過去125,000年間の地球上での人類の移動パターンに対する過去の気候と海水準の変動の影響を定量化する数値モデルを構築した。この数値モデルでは、およそ106,000~94,000、89,000~73,000、59,000~47,000、45,000~29,000年前のアラビア半島とレバント地域全体で、氷期における人類の移動の波が顕著に認められた。この結果は、考古学データと化石データとほぼ一致している。
今回の研究で得られた知見は、全球的な人口分布が決まる際に地球の軌道要素変動の時間スケールでの気候変動が重要な役割を果たすことを実証している。その反面、突然起こる千年スケールの気候変動は、それより限定的な局所的影響しかないことも実証された。また、この数値モデルは、ホモ・サピエンスが約90,000~80,000年前という早い時期に中国南部とヨーロッパにほぼ同時に到達したことを示している。
doi:10.1038/nature19365
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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