微生物学:クロストリジウム・ディフィシル感染症の治療標的と考えられる受容体が新たに判明
Nature
2016年9月29日
Clostridium difficile菌が産生する病原性毒素を宿主細胞に侵入させる受容体ファミリーがマウスの研究によって同定されたことを報告する論文が、今週に掲載される。この研究結果は、C. difficileが関係する疾患(例えば、胃腸炎)を治療する際の治療標的候補を特定するうえで役立つ可能性がある。
大腸のC. difficile菌感染は、先進国における胃腸炎関連死の主因であり、米国内では年間2万9000人が胃腸炎関連死で命を落としており、約50万症例の下痢の原因にもなっている。C. difficile菌感染に関連する疾患の原因物質が毒素Aと毒素Bであることが知られているが、毒素Bが大腸の内壁を覆う細胞(大腸上皮細胞)に誘導される過程は正確に解明されていない。
今回、Min Dongたちは、CRISPR/Cas9を用いた全ゲノムスクリーニングを実施し、マウスの大腸モデルオルガノイドと大腸上皮において、Wnt受容体であるFrizzledファミリーの一部が毒素Bの受容体となり、このWnt受容体によって毒素Bが宿主細胞に侵入できるようになることを明らかにした。また、今回の研究でFrizzledファミリーの受容体を遺伝的に欠失させたところ、マウスの大腸モデルオルガノイドの毒素B抵抗性が高まり、生きたマウスにおいて毒素Bによる大腸組織損傷に対する感受性が低下した。
以上の知見により、Frizzledファミリーの受容体が大腸上皮における疾患に関係する毒素Bの受容体であることが断定され、C. difficile感染症の治療における新たな治療標的がもたらされた。
doi:10.1038/nature19799
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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