Research Press Release
クロピドグレルに対する反応の解明
Nature Medicine
2010年12月20日
血液凝固阻害薬クロピドグレルに対する臨床反応が一定しない遺伝的な原因が明らかになった。この知見をうまく利用すれば、この広く使われる薬が個々の患者に有効かどうかを、あらかじめ判断できるかもしれない。
クロピドグレルは世界で最も広く処方される抗凝固剤の1つだが、その有効性の妨げになっているのが、薬の活性化に必要な代謝系の個人差である。この違いは遺伝的要因によるものとされているが、クロピドグレルの活性化にかかわる特異的遺伝子については議論が分かれている。
D Taubertたちは、パラオキソナーゼ-1(PON1)がクロピドグレル活性化に不可欠であることを明らかにした。そして、ステント血栓形成予防のためにクロピドグレル投与を受けている移植を受けて冠動脈疾患患者群で、PON1の変異と臨床像の関連を調べた。PON1のQQ192という遺伝子型をもつ患者は、RR192という遺伝子型の患者に比べてステント血栓症を起こすリスクが高かった。また、血漿中のPON1活性、活性なクロピドグレル濃度ともにRR192患者よりも低く、血小板の阻害の程度も低かった。
doi:10.1038/nm.2281
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
神経科学:AIはブレイン・コンピューター・インターフェースの制御能力を大幅に向上させるNature Machine Intelligence
-
物理学:新たな光ファイバーが通信技術を向上させるかもしれないNature Photonics
-
進化:人間の二足歩行への二つの小さなステップNature
-
社会科学:フランス革命期の「大恐怖」における噂の拡散を可視化Nature
-
古生物学:最古のアンキロサウルスに見られる極端な装甲Nature
-
環境科学:コンゴ民主共和国を侵食する都市部のガリーNature