【気候変動】パイン島氷河の後退が始まった時期
Nature
2016年11月24日
西南極のパイン島氷河の現在の急速な後退が始まったのは1945年頃で、エルニーニョ活動に伴う強い海洋温暖化の時期に続いて起こっていたことを明らかにした論文が、今週のオンライン版に掲載される。今回の研究結果は、パイン島氷河の現在の急速な薄化と後退が1940年代に始まった気候強制力に応答した傾向の一部であることを示す初めての定量的証拠となっている。
西南極のアムンゼン海に流出しているパイン島氷河は、急速に後退し、薄化しているが、その引き金となった機構については長い間解明されていなかった。今回、James Smith、 Martin Truffer、David Vaughanほかの研究チームは、浮遊しているパイン島氷河の棚氷の下で採取された3本の堆積物コアを調べた。これらのコアに含まれる堆積物の詳細な分析では、接地している氷河から浮遊する棚氷への転移が、突出した海底海嶺の近くに存在していることが立証された。Smithたちは、堆積物に用いられる年代決定法を用いて、海底海嶺の背後の棚氷の下にできた海洋空洞の形成が、熱帯太平洋でのエルニーニョ現象に関連する温暖化を経た後の1945年頃に始まったことを明らかにした。また、Smithたちは、研究対象地域で棚氷が最終的に分離したのが1970年頃だったことも明らかにした。
Smithたちは、その後の数十年間は1940年代以前の気候条件に戻ったにもかかわらず、パイン島氷河の薄化と後退は止まらなかったことを指摘している。以上の結果は、氷床の後退の背後にある機構の解明に役立ち、気候強制力が弱まっても氷床の後退が継続することを示している。
doi:10.1038/nature20136
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