【保全】アフリカゾウの個体数減少による経済的損失の算定
Nature Communications
2016年11月2日
アフリカ全土におけるゾウの個体数減少によって観光収入が年間約2500万米ドル(約25億円)減少する可能性のあることが、モデル研究によって明らかになった。その詳細を報告する論文が、今週掲載されるが、アフリカ大陸というスケールでゾウの密猟の経済的副作用を実証するという重要な研究成果といえる。
現在、アフリカは二度目の重大な密猟危機に見舞われており、2007~2014年にゾウの個体数が30%減少した。密猟を効果的に撲滅することには多額の費用を要するが、エコツーリズムによる経済的利益は、こうした密猟撲滅の費用を上回る可能性があり、絶滅の危機にある野生生物の保護は、実行可能な経済戦略となっている。
今回、Robin Naidooたちは、アフリカ全土の216か所の保護区における「ゾウ1頭当たりの」観光収入を推算するためにモデル化を行った。その結果、観光客がアフリカゾウの頭数の多い公園のある保護区を訪問する確率が高いことが分かり、ゾウが1頭増えるごとに来園者数が371%増加すると算定された。また、ゾウ関連の観光客が減ることによる収入減の推定値(年間約2500万米ドル)は、密猟撲滅のための取り組みを実施するための費用(別の研究者によって算定されたもの)をかなり上回っている。
ゾウ関連の観光客がもたらす利益が密猟撲滅のための費用を上回っているのは、東アフリカと南部アフリカのサバンナ地域であるのに対して、森林に覆われた中部アフリカは、ゾウの観察が難しく、観光収入とゾウの個体数のつながりがそれほど緊密ではない。Naidooたちは、象牙の取引による収入が年間5億9700万米ドル(約597億円)で、ゾウの個体数減少による収入減の算定値を上回るが、それでもゾウの保全とエコツーリズムの促進が地域社会に利益をもたらす実現可能な経済的選択肢であることは変わらないと指摘している。
doi:10.1038/ncomms13379
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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