非ヒト霊長類に感染したジカウイルスは宿主体内に長く残留する
Nature Medicine
2016年10月4日
サルに感染したジカウイルスは、血液中からはすぐに排除されるが、精液や唾液中では少なくとも1か月程度、生き続けることが明らかになった。このようなジカウイルス感染は免疫応答を引き起こして、その後の別系統のジカウイルスのチャレンジ感染からサルを防御した。ジカウイルス感染は、ヒト成人のほとんどでインフルエンザに似た症状を引き起こす。しかし、妊娠中の女性が感染すると、成長中の胎児に重い神経障害が起こることがある。ジカウイルス感染については蚊による伝染の広がりにもっぱら関心が集まっているが、症例報告からはまた別の感染経路もありうることが示唆されている。
ジカウイルスが体内を移動する仕組みと、体がウイルスに応答する仕組みを明らかにする目的で、J Whitneyたちは、非ヒト霊長類である2種類のマカクザル(アカゲザルとカニクイザル)を使い、2種類のジカウイルス系統の動態を追跡した。これらの計36頭のサルのさまざまな体液や固形組織について、ウイルス存在量を長時間にわたって測定した結果、ジカウイルスは組織によって異なる速度で移動し、一部の組織では他の組織よりもずっと長い期間にわたって検出されることが分かった。著者たちはまた、ジカウイルスに対する免疫応答も追跡し、ウイルスの標的になる数種類の免疫細胞を明らかにした。
ジカウイルスのこのような性質がヒトでも見られるのかどうかはまだ不明だが、これらの知見からは、ヒトの精液や唾液中のジカウイルス存在量のさらなる解析を進めることが、性感染や家庭内感染の経路候補を見つける根拠となると考えられる。また今回の研究では、複数種のサルがジカウイルス感染の治療法候補の探索に適したモデルになる可能性が示された。
doi:10.1038/nm.4206
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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