Research Press Release
健康:高血圧の新たな外科的治療法
Nature Communications
2016年9月28日
マウスの研究で高血圧の新しい治療法が示唆されたことを報告する論文が、今週掲載される。この研究結果の妥当性がヒトにおいて確認されれば、この方法を利用して、現在利用可能な治療法に応答しない相当数の患者の血圧制御に役立てることができるかもしれない。
これまでの研究では、高血圧の発症において神経系と免疫系の相互作用が起こっている可能性が高いことが判明しているが、この相互作用は直接的に実証されていなかった。
今回、Giuseppe Lemboたちは、マウスを用いた研究を実施し、高血圧発症の初期段階で、免疫系の主要器官である脾臓への神経活動(交感神経発射)が増加していることを明らかにした。この神経発射は、その後のT細胞(リンパ球の一種)が関与する免疫応答に寄与している。この免疫応答で、脾臓内のT細胞が血流に入り、血圧の制御に直接関与する器官(例えば、腎臓や大動脈)に侵入する。こうした脳と脾臓の間の情報伝達には、迷走神経と脾臓神経という2種類の神経が関与しており、脾臓神経上のα7nAChRsという受容体の活性を特異的に必要とする。
Lemboたちは、高血圧の発症が脳・脾臓間の情報伝達によって始まることを示す証拠をさらに得ようと、脾臓神経を局所的に加熱して、その神経活動を永久的に阻害した。この外科的介入で、脾臓のT細胞が血管系や腎臓に移動しなくなり、それによりマウスの高血圧の発症が阻止された。
doi:10.1038/ncomms13035
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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