恐怖記憶の想起に関連する経路が新たに見つかる
Nature Neuroscience
2016年9月6日
恐怖に関連する神経経路がマウスの研究によって新たに見つかり、その内容を説明する論文が、今週掲載される。この神経経路は、マウスが過去に形成された恐怖の記憶を想起する際に必要とされる。
どんな生物種の生き残りにとっても、環境からの刺激と有害な結果の関連を学習する能力が最も重要だ。脳の深層に存在するアーモンド形の構造体である扁桃体は、この種の恐怖記憶の形成に主要な役割を担っている。環境からの刺激から扁桃体に至る経路は、新皮質感覚野を経由するとこれまで長い間考えられてきた。生物は、新皮質感覚野によって、音、味、匂いや見えているものを解読しているのだ。
今回、Yang Yangたちは、これとは逆の方向に作用する脳内経路、つまり扁桃体から新皮質感覚野に戻る経路もあることを明らかにした。Yangたちは、この経路が学習時に再構成されることが恐怖刺激を記憶する上で非常に重要で、この経路を阻害すればマウスの恐怖応答を減らせると考え、この経路の微小構造を調べることができ、操作もできるツールと技術をマウスの実験に用いて、この考えを実証した。今回の研究結果は、扁桃体の機能不全に関連する疾患(例えば、不安障害や外傷後ストレス障害)にとって重要な意味を持つ。
同時掲載されるBo LiのNews & Views記事には、「日進月歩の神経科学技術を利用することについて…健康状態と疾患状態における恐怖の制御と制御困難に関する神経機構の解明が期待できる点…には疑問の余地がない」と記されている。
doi:10.1038/nn.4370
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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