Research Press Release
【気候科学】ヒマラヤ山脈の氷河融解の原因を明らかにする化学的痕跡
Nature Communications
2016年8月24日
ヒマラヤ山脈とチベット高原の氷河の融解を加速させていると考えられる黒ずんだ煤(すす)粒子の大部分が、インド亜大陸北部と中国での化石燃料の燃焼を原因としているという結論を示した研究論文が、今週掲載される。すす粒子の発生源を特定することで、効果的な大気汚染削減活動の指針を改善できる可能性がある。
ヒマラヤ山脈とチベット高原の氷河の多くが薄化し始めており、季節的な融解水に依存する数十億人の人々にとって深刻な問題となっている。この氷河の薄化の主たる原因は、黒色炭素のエアロゾル(すす)の存在であり、その熱放射特性によって大気と氷表面が加熱されることがモデルシミュレーションで示唆されている。
今回、Shichang Kangたちは、二核種炭素同位体フィンガープリント法を用いて、ヒマラヤ山脈とチベット高原の大気中と雪原表面で採取された黒色炭素粒子の化学的痕跡を同定した。この方法を用いることで、発生源の種類(バイオマスか化石燃料か)と地域を峻別できるようになった。チベット高原北部で採取された試料の特徴からは、この黒色炭素の主な発生源(試料全体の約66%を占める)が中国の化石燃料であることが示された。これに対して、ヒマラヤ山脈で採取された黒色炭素粒子の場合は、インド亜大陸北部のインダス-ガンジス平原のバイオマスと化石燃料を発生源とするものがほぼ同じ割合を占めていた。
doi:10.1038/ncomms12574
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