Research Press Release
【神経科学】睡眠不足は脳活動を変える
Nature Communications
2016年8月24日
ヒトが睡眠不足になると脳内の接続性が変化する可能性のあることを報告する論文が掲載される。睡眠は、ニューロン間の接続強度を調節し、学習と記憶にとって重要なものと考えられているが、この学説をヒト被験者で検証することが難しかった。今回の研究では、間接的な測定によって接続性の変化が測定された。
今回、Christoph Nissenたちは、20人の被験者について、一晩睡眠をとった後の脳活動と一晩断眠した後の脳活動を比較した。Nissenたちは、運動の制御を担う脳領域である運動皮質に着目し、磁気パルスを印加して被験者の脳内のニューロンを活性化した。その結果、左手の筋肉の反応を引き起こすために必要な磁気パルスの強度が、断眠した被験者の方がかなり低いことが判明し、断眠すると脳の興奮性が高まることが示唆されている。また、ニューロンの活動依存的な接続性の変化は、断眠した被験者の方が弱いことも判明した。断眠した被験者は、単語対連合記憶課題の成績が思わしくなく、血液サンプルのBDNF(シナプス可塑性を制御することが知られるシグナル伝達分子)の値も低かった。
以上の研究結果を総合すれば、睡眠不足によって脳内の接続性が変化し、記憶課題の成績が低下する機構の解明に役立つ可能性がある。
doi:10.1038/ncomms12455
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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