【がん】赤毛に強く関連する遺伝子バリアントが皮膚がんにおける体細胞変異の頻発に影響している
Nature Communications
2016年7月13日
皮膚がんの一種である黒色腫の患者の中で、赤毛とそばかすに関連するMC1R遺伝子の遺伝的バリアントを持つ者は、持たない者より黒色腫における変異が42%多いことを報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、個人の黒色腫の発症リスクを理解する上で重要な意味を持っている。
MC1R(メラノコルチン1受容体)というタンパク質は、皮膚の色素沈着に関係している。このタンパク質をコードするMC1R遺伝子には遺伝的バリアント(いわゆる「Rバリアント」)があり、Rバリアントが2コピーあることが赤毛に関連している。Rバリアントを1コピーだけ持つ者は、原則として赤毛ではないが、紫外線(日光)曝露への応答がRバリアントを持たない者とは異なっている。MC1R遺伝子のバリアントは、黒色腫の発症リスクが高いことと関連することが知られている。
今回、David Adamsたちは、Rバリアントを持つ患者とRバリアントを持たない患者のコホートから採取した黒色腫検体における変異の数を調べた。Adamsたちは、既に公表されている2つのデータセット(黒色腫検体数がそれぞれ273と132で、それぞれの検体に由来するDNA塩基配列情報が含まれている)を解析した。その結果分かったのは、1コピーか2コピーのRバリアントを持つ者がRバリアントを持たない者より黒色腫検体のDNAにおける変異が多かったことだ。また、1コピー以上のRバリアントを持つ者の黒色腫検体に含まれる特定の変異(塩基がCからTに変化したもの)を調べたところ、その数がRバリアントを持たない者より42%多いことが判明した。
さらにAdamsたちは、変異の増加に関連するもう1つの要因が年齢であることを発見した。年齢が1つ上がると黒色腫検体中の変異の数は1.7%増えていた。
doi:10.1038/ncomms12064
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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