【行動】ヒトの判断バイアスの解明に前進
Nature Communications
2016年4月27日
ヒトの意思決定のバイアス(偏り)の基盤となる機構を新しいモデルを用いて説明する論文が掲載される。この行動研究では、ヒトの論理的思考において、報酬に依存する学習と意思決定と注意が強く関連していることが浮き彫りになった。
通常、ヒトは、複数の証拠を組み合わせて意思決定を行うが、それぞれの状況下で最大の報酬を伴う選択または選択肢がどれなのかという判断が偏ることがある。こうした意思決定過程に伴う神経機構については、十分な理解がなされていない。
今回、Alireza Soltaniたちは、行動実験とモデル化を組み合わせて、選択によって確率の異なる結果が得られる状況下での意思決定バイアスに関係する機構についての解明を進めた。この研究に参加した37人の大学生に、異なる結果(報酬)と関連づけられた最大4つの形状の組み合わせを示し、課題を遂行させた。参加者には、形状の組み合わせを次々と示して、報酬の異なる(赤と青の)2つの標的のいずれかを選ばせた。この実験で、参加者は、報酬を得る可能性を最大化するような選択を行い、120回の実験を通じて、それぞれの形状について報酬が得られる確率を学習していた。これに対して、それぞれの形状に対する報酬の可能性を参加者に推測させる実験では、参加者は、報酬を得られる確率が低い形状の方が高い価値を有すると評価した。これは、「基準値の無視」という既知の判断バイアスで、複数の手掛かりを同時に示されたヒトが、発生確率の低い結果に先行する手掛かりの予測力を過大評価する傾向のことだ。
Soltaniたちは、この判断バイアスが生じる過程を説明するため、生物物理学的な発想によって、報酬に基づく学習過程と意思決定過程と注意過程を組み込んだ神経モデルを構築し、これらの過程全ての相互作用が生じ、この相互作用が、今回の研究で得られた直観に反した行動学上の新知見を説明する上で不可欠なことを明らかにした。
doi:10.1038/ncomms11393
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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