Research Press Release
【人類遺伝学】寒さがこたえるのは変異遺伝子のせいだった
Nature Communications
2015年12月9日
寒さによって悪化するヒトの末梢疼痛の早期発症の原因となる単一の遺伝的変異が、ヨーロッパの家系で同定された。この疼痛の気温依存性の基盤となる分子機構について記述された論文が、今週掲載される。それによれば、この分子機構が細胞のイオンチャネルの機能の変化に関連しているとされる。
今回、Ingo Kurthたちは、寒さによって悪化する疼痛の患者(6歳の少女、その父、父方の叔母、父方の叔母の娘と父方の祖母)のいるヨーロッパ系の3世代にわたる家系を調べて、この家系に属する2人について全エキソーム塩基配列解読を行った。その結果、ナトリウムイオンチャネルを修飾して、感覚ニューロンの興奮性を変化させる特異的な遺伝的変異が同定された。気温が低下すると感覚ニューロンの活動が低下するのが通常だが、上述の遺伝的変異があると、寒冷条件下でもニューロンは活発に活動し続ける。この疼痛感知ニューロンの興奮性の上昇によって冷覚疼痛に対する感受性が高まっている可能性があるという考えをKurthたちは提唱している。
この研究結果は、過去に行われた齧歯類の実験結果とも一致しており、このありふれた冷覚疼痛疾患の解明に役立つ。
doi:10.1038/ncomms10049
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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