開発途上国の方が地球上の乾燥地の拡大の影響を大きく受ける
Nature Climate Change
2015年10月27日
世界全体の温室効果ガス排出量が増え続ければ、2100年には地球の全陸地面積の半分以上が乾燥地になる可能性があるとする研究論文が、オンライン版に掲載される。今回の研究では、乾燥地の拡大の4分の3以上が開発途上国で起こると予測され、影響が開発途上国に偏ることが示唆されている。そのため、貧困レベルが高くなり、土地の荒廃が深刻化する可能性がある。
乾燥地とは、降水量が地表と植物の葉からの水分の蒸発量によって相殺される地域のことだ。現在は地球の全陸地面積の約40%が乾燥地となっており、気候変動と人間の活動(例えば都市化と人口増加)のために乾燥地の拡大が予想されている。
今回、Jianping Huangたちは、過去の観測データ(1948~2005年)と全球気候モデルのシミュレーションデータを比較し、気候モデルで地球乾燥化の傾向が過小評価されていることを明らかにした。次にHuangたちは、この観測データを用いて、モデルによる予測を補正し、中排出シナリオと高排出シナリオにおける乾燥地の占有割合を調べた。高排出シナリオでは、2100年に乾燥地の面積が(基準となる1961~1990年の乾燥地面積と比べて)23%増加し、地球の全陸地面積の56%を占めるようになることが明らかになり、乾燥地の拡大の78%が開発途上国で起こるとされた。
Huangたちは、温暖化傾向が湿潤地域より乾燥地域で顕著なことを明らかにし、開発途上国で気温と乾燥度の上昇と人口増加が共に起こると、乾燥地がさらに拡大するリスクが上昇すると結論づけている。
doi:10.1038/nclimate2837
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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