【生物工学】鎌状赤血球貧血を診断するためのモバイル検査器
Scientific Reports
2015年10月23日
鎌状赤血球貧血の診断検査に使えるスマートフォン用アタッチメントと関連アプリについて記述された論文が、今週掲載される。
鎌状赤血球貧血は、赤血球中に異常な形状のヘモグロビンを生じさせる変異を原因とする遺伝性疾患で、中央アフリカと西アフリカの住民の約25%が罹患している。患者は、血流が阻害されることがあり、その結果として疼痛と臓器傷害が起こり、脳卒中のリスクが高まる。ところが、鎌状赤血球貧血の確認検査は、高コストになる傾向があり、特殊な機器と訓練を必要とする。
今回、Savas Tasogluたちは、“Sickle Cell Tester(鎌状赤血球検査器)”というスマートフォンに接続できる軽量の小型アタッチメントを開発し、3Dプリンターで製作した。Sickle Cell Testerは、磁気浮上技術を利用した機器で、光学レンズとスマートフォンのカメラを使って、試料中の赤血球を解析する。そして特別に開発されたアプリケーションによって赤血球の分布が自動的に解析され、鎌状赤血球貧血の存否が判定される。
Sickle Cell Testerの検証研究では、鎌状赤血球貧血と臨床的に診断された患者と対照患者だけが対象となり、鎌状赤血球形質(ヘテロ接合)を保有する患者は対象となっていなかった点をTasogluたちは指摘している。この磁気浮上技術を利用した機器によって鎌状赤血球保有者の試料と鎌状赤血球貧血患者の試料を区別できるかどうかを確かめるには、さらなる検証が必要とされる。
doi:10.1038/srep15022
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
神経科学:AIはブレイン・コンピューター・インターフェースの制御能力を大幅に向上させるNature Machine Intelligence
-
物理学:新たな光ファイバーが通信技術を向上させるかもしれないNature Photonics
-
進化:人間の二足歩行への二つの小さなステップNature
-
社会科学:フランス革命期の「大恐怖」における噂の拡散を可視化Nature
-
古生物学:最古のアンキロサウルスに見られる極端な装甲Nature
-
環境科学:コンゴ民主共和国を侵食する都市部のガリーNature